
中学高校のころに学校行事で,ためになる映画とか,歌舞伎や能を観る機会が何度かあった気がする。しかしほとんど寝ていたしよく覚えていないし,そんな行事はじつはなかったような気もする。ついさいきんまで,能など伝統芸能にはなんの興味もなかったし,継承者問題などの話を耳にしても,おもしろくないものは廃れていくのが当然だ,ぐらいの感想しかなかった。
ある日ラジオかなにかで,世阿弥の風姿花伝,いわゆる花伝の書について解説しているのを聴いて,これがかなりおもしろくて,すぐに購入して読んでみた。秘すれば花というやつです。

じつはラジオで聴いた内容はあらかた忘れてしまった。これは基本的には能楽論の本であるが,現代においても充分通用するコマーシャル戦略/人生訓的な内容でもある。奥が深いのでなかなか難しく自分なりに消化できたとは思っていないし,年齢を重ねてから読むとまた違った解釈ができるはずだ。
それ以来,テレビで能をやっていたら必ず観るようにしている。少し知識をもってから観ると,これがけっこうおもしろい!謡や囃子の感じもいい。テレビでは音響の問題などもあるのであまり迫力のあるいい音では聴けないが,機会があればぜひ実物を観にいきたいと思っている。あまりよく知らないのでアレなのだが,能の筋はだいたい決まっていて,脇役がいて怪しげな人物が出てきて,脇役が話を聴いているうちにおかしなことになってきて,笛や鼓がだんだん盛り上がってくる。怪しげな人物は亡霊なのだ。ガラッと場面がかわり,能面をつけた亡霊が舞い,成仏しておわり。伊沢元彦氏の逆説の日本史8巻で,能面とは’演者が怨霊にとりつかれないようにするため’というような解釈になっていたが,なるほどそうかなと思った。

↑↑中将面,中将すなわち在原業平の面

↑↑般若面,嫉妬に狂う女の面だそうな

↑↑翁面,知恵と安らぎの象徴